超音波内視鏡(Endoscopic Ultrasonography)について
超音波内視鏡(Endoscopic Ultrasonography)は、内視鏡スコープの先端に超音波振動子がついた特殊な機器を口から食道・胃・十二指腸・大腸などの消化管に挿入し、体外式の超音波検査では骨などが邪魔をして観察ができない胆嚢,胆管,膵臓などの病気を鮮明な画像で観察し、診断 することができます。特にCTやMRIでも発見が困難な小さな膵臓がんを最も早期の段階で発見できる検査方法です。さらにソナゾイドなどの造影剤を利用することで検査できる病気には下記疾患があります。
胆のう疾患
胆のうポリープ、胆のう腺腫、胆のうがん、胆のう結石(胆石)、胆のう腺筋腫症、 急性胆のう炎、慢性胆のう炎、胆泥、黄色肉芽腫性胆のう炎、気腫性胆のう炎、陶器様胆のう、石灰乳胆汁
胆管疾患
総胆管結石、肝内胆管結石、胆管がん、肝内胆管がん、胆管狭窄、胆管ポリープ、原発性硬化性胆管炎、胆管寄生虫、IgG4関連胆管炎、Mirizzi症候群、膵胆管合流異常、胆管内乳頭状腫瘍(intraductal papillary neoplasm of the bile duct:IPNB)、十二指腸乳頭部腺腫、十二指腸乳頭部腺がん、Lemmmel症候群、カルチノイド
<膵臓疾患>
膵嚢胞性病変(膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)、漿液性嚢胞性腫瘍(SCN)、粘液産生膵腫瘍(MCN)、Solid pseudopapillary neoplasm(SPN))、膵腫瘍(膵臓がん、内分泌細胞癌、腺房細胞がん、退形成性膵管がん)、急性膵炎、慢性膵炎、膵石症、輪状膵、膵仮性のう胞、膵管癒合不全、自己免疫性膵炎、腫瘤形成性膵炎
消化管疾患
粘膜下腫瘍(SMT:submucosal tumor→悪性リンパ腫、GIST(gaastrointestinal stromal tumor)、平滑筋腫、平滑筋肉腫、神経鞘腫、粘膜下腫瘍様の発育をするがん、炎症性線維性ポリープ、脂肪腫、脂肪肉腫、血管腫、血管肉腫、カルチノイド、神経内分泌腫瘍、迷入膵、顆粒細胞腫、リンパ管腫、のう胞、悪性黒色腫、Glomus(グロムス)腫瘍 )、消化管がん(食道・胃・大腸)の深達度診断(がんが消化管壁のどの程度の深さまで浸潤しているか)
その他の疾患
後縦隔腫瘤、腹腔内腫大リンパ腫、副腎腫瘤、肝腫瘤、骨盤内腫瘤、術後吻合部病変、 がんによるリンパ節転移診断
超音波内視鏡(Endoscopic Ultrasonography)の機器について
①超音波内視鏡専用機(当院ではコンベックス走査型)
コンベックス型のプローブを用いて行う超音波内視鏡検査です。口から超音波内視鏡(Endoscopic Ultrasonography)を挿入し、胃の壁にコンベックスプローブを当てることで肝臓・胆嚢・膵臓を主に観察し、後述のEUS-FNAを施行する場合もあります。これは術前の評価を行うのに有用であります。
②細径プローブ型
主に食道・胃・大腸などの消化管内から超音波を当てて粘膜下腫瘍のサイズ・内部性状・形態評価やがんの深達度診断(がんが消化管壁にどの程度浸潤しているか)を行い、正確な診断と治療方針の決定を行います。また、鉗子孔から細い針を出して、消化管の外の病変から組織を吸引し採取する、超音波内視鏡下穿刺術(EUS-FNA)も行います。
超音波内視鏡下穿刺術(EUS-FNA)について
超音波内視鏡下穿刺術(EUS-FNA)は超音波検査・X線CT・MRIなどでは判断し難い症例に対して、実際に対象となる病変の内部の組織をとることで正しい診断に近づけることが可能です。ですから、外科手術、化学療法を選択するうえで組織学的診断が非常に重要であると考えられます。
偶発症について
偶発症としては胃カメラと同じように消化管裂傷や穿孔があります。また、穿刺をすることにより出血の可能性もございます。消化器内視鏡学会では、胆管・膵臓のEUSでは約0.042%、EUS-FNAでは約0.716%と報告されています。このような偶発症を避けるべく細心の注意を払いますが、万一生じた場合には最善の対処を致します。偶発症の殆どは保存的加療で改善が得られますが、場合によっては入院加療や外科手術が必要となることがございます。
超音波内視鏡(Endoscopic Ultrasonography)は一般的に大学病院や一部の大規模総合病院で行われる検査です。クリニックで超音波内視鏡機器を常備しているのは日本で当院のみです。